2018年12月2日にM−1グランプリを見ましたので、その感想を載せていこうと思います。感想は登場順に、敬称略で参ります。
まずは最初の6組から。
見取り図(吉本興業)
結婚を前提とした彼女が欲しいからと女の子を次々に紹介するネタでした。
普通の漫才に加えて、細かいボケを先に挟んでおいて後から思い出したようにツッコむ形を多用する漫才でした。ただ、この形式で気になったのは、違和感のある言葉を何の訂正もなくしばらく放置されると観客が「えっ?」となってしまう危険性があるところと、じゃあ知らない人をサラッとネタに仕込めばいいのかというと、自然過ぎてその「知らない人」の名前が観客の頭から抜け落ちてしまい、後からツッコんでもツッコミの効果が激減してしまう可能性があるというところでしょうか。最大の特徴が不安定な諸刃の剣状態だったのが振るわない評価に繋がってしまったのかもしれません。
スーパーマラドーナ(吉本興業)
いい人のふりして実は怖い人が隣のお宅にお邪魔して悪さをしようとするも、そのお宅も怖い人だったというネタでした。
ホラーとお笑いの境目をウロウロするネタでして、ギリギリお笑いのほうに居続けるという、笑いを得るための最低条件はクリアしているように見えました。予想外の展開が続き、伏線回収も比較的スムーズに進み、話の展開としては悪くなかったのですが、後半に笑いが減ってしまったようです。ホラー過ぎた、という評価もあるようですが、それとは別に、個人的にはボケが繰り出した「すべった一発ギャグ」が変なウケ方をしてしまったのも大きかったのではないかと考えられます。
かまいたち(吉本興業)
タイムマシンがあったらやり直したいことを言い合い、片方はありがちなことを言い、もう片方はポイントカードを作りたいという物珍し気なことを言い、互いに喧嘩し合うネタでした。
どちらが本当に過去に戻りたくなるかを討論し、ありがちなことを言うツッコミの論理の穴をつくことで笑いを取る形でして、「確かにそこが穴なんだけれど観客がうっかりスルーしかけてしまう」というところでツッコミを入れるのが非常にうまい印象を受けました。これでトップスリーに入らないというのは昨今のレベルの高さをうかがわせるものでしょう。敢えて不利に働いたところをひねり出すならばテーマも形式も普通なものを選んだ点でしょうか。
ジャルジャル(吉本興業)
「国名分けっこゲーム」というオリジナルのゲームをしようと誘いまして、国名の最初数文字を言ってから相方がその国名の残りを言うというゲームをひたすらやるネタでした。
もともと非常に限定されたルールで似たようなことを繰り返しながら発展させてゆくネタを得意としているコンビでございますが、殊に漫才だと繰り返しだけで全体的なストーリーがないと指摘され続けてきたわけです。その指摘を受けてか、審査員の方もおっしゃっていましたが、最初はオリジナルのゲームをしようとだけ言い、単純ではあるものの誰もやっていないようなゲームを実際にやって理解させる、というところで、説明の手間を省きつつ、ちょっとしたストーリー付けを達成できているように見えます。そして、本ネタでは得意の繰り返しネタをしまして、何だかよく分からないけど妙におかしくなるという、本人たちの思惑を見事に達成していました。もちろん、単純な繰り返しはせず、いわゆる「裏打ち」のようなものを用いたりと飽きさせない手法を詰め込んでいる。M−1で披露した彼らのネタの中では間違いなく最高傑作であり、集大成だったと思われます。
ギャロップ(吉本興業)
欠員が出た代わりにコンパへ出てくれと頼むも、頼まれた方が自分のコンプレックスを理由に断りまくるというネタでした。
ちょっとした言い回しや間の取り方が上手ではありましたが、普通の漫才を上手にやられただけに留まっている印象でして、今回の決勝でこれでは厳しかったのかなあという印象です。彼らに限らず、「何でこの舞台でこのネタを?」という、ネタの選択で間違えたのではなかろうかという組がボチボチ見られました。「漫才をやり過ぎてそこのところが分かんなくなってしまったのではないか」という意見が、これまで聞いた中で最も納得できるものでした。決勝に行けるレベルの人ならではの失敗とも言えましょう。
ゆにばーす(吉本興業)
カップルのデートだと間違われるのが嫌だという流れから遊園地のロケをするもちょこちょこカップルに間違われるネタでした。
冒頭でのつまづきが最後まで引っ張った、という評価がされていた組でして、確かに最初の失敗で後々の言動がここまであざとく見えるのかと思いましたが、もう一点だけ気付いたことがございます。漫才のネタ中に別の漫才を挟み込むということをしていたのでありますけれども、それは今年のM−1予選2回戦で披露したネタにも組み込まれていたものであります。そして、どちらを先に創ったのかは分かりませんけれども、明らかに2回戦で披露したネタのほうが話の前後と親和性があり、自然な感じでネタを見られたのに対して、決勝でのネタは強引感が出てしまい、それがダメ押しになってしまった可能性が充分考えられます。決勝のために気合を入れ、ネタをいじりすぎてしまったのかなあと思いました。
以上です。感想は次に続きます。
まずは最初の6組から。
見取り図(吉本興業)
結婚を前提とした彼女が欲しいからと女の子を次々に紹介するネタでした。
普通の漫才に加えて、細かいボケを先に挟んでおいて後から思い出したようにツッコむ形を多用する漫才でした。ただ、この形式で気になったのは、違和感のある言葉を何の訂正もなくしばらく放置されると観客が「えっ?」となってしまう危険性があるところと、じゃあ知らない人をサラッとネタに仕込めばいいのかというと、自然過ぎてその「知らない人」の名前が観客の頭から抜け落ちてしまい、後からツッコんでもツッコミの効果が激減してしまう可能性があるというところでしょうか。最大の特徴が不安定な諸刃の剣状態だったのが振るわない評価に繋がってしまったのかもしれません。
スーパーマラドーナ(吉本興業)
いい人のふりして実は怖い人が隣のお宅にお邪魔して悪さをしようとするも、そのお宅も怖い人だったというネタでした。
ホラーとお笑いの境目をウロウロするネタでして、ギリギリお笑いのほうに居続けるという、笑いを得るための最低条件はクリアしているように見えました。予想外の展開が続き、伏線回収も比較的スムーズに進み、話の展開としては悪くなかったのですが、後半に笑いが減ってしまったようです。ホラー過ぎた、という評価もあるようですが、それとは別に、個人的にはボケが繰り出した「すべった一発ギャグ」が変なウケ方をしてしまったのも大きかったのではないかと考えられます。
かまいたち(吉本興業)
タイムマシンがあったらやり直したいことを言い合い、片方はありがちなことを言い、もう片方はポイントカードを作りたいという物珍し気なことを言い、互いに喧嘩し合うネタでした。
どちらが本当に過去に戻りたくなるかを討論し、ありがちなことを言うツッコミの論理の穴をつくことで笑いを取る形でして、「確かにそこが穴なんだけれど観客がうっかりスルーしかけてしまう」というところでツッコミを入れるのが非常にうまい印象を受けました。これでトップスリーに入らないというのは昨今のレベルの高さをうかがわせるものでしょう。敢えて不利に働いたところをひねり出すならばテーマも形式も普通なものを選んだ点でしょうか。
ジャルジャル(吉本興業)
「国名分けっこゲーム」というオリジナルのゲームをしようと誘いまして、国名の最初数文字を言ってから相方がその国名の残りを言うというゲームをひたすらやるネタでした。
もともと非常に限定されたルールで似たようなことを繰り返しながら発展させてゆくネタを得意としているコンビでございますが、殊に漫才だと繰り返しだけで全体的なストーリーがないと指摘され続けてきたわけです。その指摘を受けてか、審査員の方もおっしゃっていましたが、最初はオリジナルのゲームをしようとだけ言い、単純ではあるものの誰もやっていないようなゲームを実際にやって理解させる、というところで、説明の手間を省きつつ、ちょっとしたストーリー付けを達成できているように見えます。そして、本ネタでは得意の繰り返しネタをしまして、何だかよく分からないけど妙におかしくなるという、本人たちの思惑を見事に達成していました。もちろん、単純な繰り返しはせず、いわゆる「裏打ち」のようなものを用いたりと飽きさせない手法を詰め込んでいる。M−1で披露した彼らのネタの中では間違いなく最高傑作であり、集大成だったと思われます。
ギャロップ(吉本興業)
欠員が出た代わりにコンパへ出てくれと頼むも、頼まれた方が自分のコンプレックスを理由に断りまくるというネタでした。
ちょっとした言い回しや間の取り方が上手ではありましたが、普通の漫才を上手にやられただけに留まっている印象でして、今回の決勝でこれでは厳しかったのかなあという印象です。彼らに限らず、「何でこの舞台でこのネタを?」という、ネタの選択で間違えたのではなかろうかという組がボチボチ見られました。「漫才をやり過ぎてそこのところが分かんなくなってしまったのではないか」という意見が、これまで聞いた中で最も納得できるものでした。決勝に行けるレベルの人ならではの失敗とも言えましょう。
ゆにばーす(吉本興業)
カップルのデートだと間違われるのが嫌だという流れから遊園地のロケをするもちょこちょこカップルに間違われるネタでした。
冒頭でのつまづきが最後まで引っ張った、という評価がされていた組でして、確かに最初の失敗で後々の言動がここまであざとく見えるのかと思いましたが、もう一点だけ気付いたことがございます。漫才のネタ中に別の漫才を挟み込むということをしていたのでありますけれども、それは今年のM−1予選2回戦で披露したネタにも組み込まれていたものであります。そして、どちらを先に創ったのかは分かりませんけれども、明らかに2回戦で披露したネタのほうが話の前後と親和性があり、自然な感じでネタを見られたのに対して、決勝でのネタは強引感が出てしまい、それがダメ押しになってしまった可能性が充分考えられます。決勝のために気合を入れ、ネタをいじりすぎてしまったのかなあと思いました。
以上です。感想は次に続きます。