2018年9月22日に放送されたキングオブコント2018を見ましたので、感想を書いて見たいと思います。ネタ順に、敬称略で参ります。
やさしいズ(吉本興業)
自分を首にした会社へ爆弾テロを仕掛けようとするもバイトの清掃員に見つかり、いろいろやりとりするというネタでありました。
導入があり、主な笑いどころを客に分かってもらい、徐々に話を進め、しばらくしてから場面に変化をつけてラストのオチに持って行くという話の構成はコントの基本形となっておりまして、主に笑って貰うポイントは深刻な爆弾テロ犯と全く深刻でない清掃員のギャップから生じる噛み合わない話のやりとりでした。清掃員のキャラクターは当然笑いに足るポイントではありますが、それを中心にどうにかしようとしてどうにかでき切れなかった印象です。間を取ってみたりとか、随所に工夫はしているのですが、「あ、間を取ってるな」と分かってしまうと多くの場合は間の使い方としてはよろしくないように思われます。
マヂカルラブリー(吉本興業)
知らないおじさんに傘泥棒の容疑をかけられるも、その場面だけが延々とループしていき、登場人物がそれに気づき、どうにかしようとするネタでありました。
市民権を得てきた「ループもの」を用いたコントでありまして、その背景を利用し、どうでもいい場面でループするという現象をいじっていくところを笑って貰うという目論見はそれなりにうまくいっていたのではないかと思われます。ループしているという説明をしながらも展開を進め、更に笑えるポイントも入れていくという意味では非常に効率のいい展開はしていたと思いますが、形式上大体同じものを見せられるわけで、ループごとの変化は特に後半はもっと大きくしてもよさそうには見えました。ラストでループを終わらせようとして阻止されるところは効いていると思います。
ハナコ(ワタナベエンターテインメント)
室内で飼っている犬が帰宅した主人を迎えて遊んでもらい、来客に警戒するという犬としてはよくある場面ではあるものの、犬の言動がかなり人間寄りというネタでありました。
犬の行動がかなり人っぽいのに他の登場人物は犬を普通の犬として扱い、知っているのは観客だけというシステムがかなり異様ではありましたが、話の展開は単なる普通の日常生活に留めることによって話の展開から無理矢理さを一切なくすという離れ業によって、出来としては非常に高いところでバランスよくまとまっている印象でした。犬の言動と周囲との差を笑うのがネタの基本にはなっていますが、犬の演技もあってか話の繰り返し感もなく、特に話が長いとも感じられませんでした。
さらば青春の光(ザ・森東)
熱血予備校教師の典型みたいな人が生徒に発破をかけるもその人はそれだけで教室を出て行き、授業は別の人がやるというネタでありました。
同じようなものをひたすら繰り返しつつ徐々に発展させるネタに長けているコンビではございましたが、よりクオリティが上がっていました。同じものを繰り返すという形式はネタがその繰り返しにどうしても集中してしまい、ストーリーを止めてしまったり、場合によっては無くしてしまったりする傾向が強いのですが、このネタに関して言えば「鼓舞する人」のおかしさや悲哀といったストーリーがしっかり入っており、また物語の破綻も一切見られずに最後まで行けていました。ただ、最後のオチは空振った感があり、もう少し別の選択肢もあったのではないかと考えられます。
だーりんず(SMA)
居酒屋で他の人の会計をこっそり済ませるということをやろうとするも様々な小さいトラブルが積み重なって結局うまくいかないネタでありました。
会計を済ませようとする話がずっと続くわけですが、笑いどころの中心が「そういうベタな格好つけをやりたい人が陥る現象を妙な名前で呼ぶ」になっているのはこの大会ではやっぱり弱すぎるのではないかと思われます。何かやっては独特な名前、何かやっては独特な名前、という風に繰り返し感も強く、話の変化も乏しく感じられる危険性があり、それが点数に響いた可能性はあります。
チョコレートプラネット(吉本興業)
知らない人に閉じ込められて脱出ゲーム的なものをやらされるのかと思いきや、閉じ込められた人が「ここはどこだ」「お前は誰だ」と喚いて話を一切聞かないというネタでありました。
ありがちな悪い人の言うことを全く聞かないという形で最後まで行くわけですが、喚く男の合間合間に悪い人が発する諦めの言葉や緩い言葉をうまく滑り込ましたり、喚く男がよく分からない装置を持ってきたりと、繰り返しによる退屈を防ぐ仕掛けが施されています。そして、後半には悪い人も別のゲームに参加させられ、喚く側に移行するという展開も、伏線を用いてうまく仕上げている印象です。懸念は喚きがうるさく感じるかどうかという一点でありまして、これに関してはどうしても好みが関係しまして、会場ではちょうどよかったようですが個人的には喚き方が少々過剰だったかなと感じました。
GAG(吉本興業)
進学校の真面目な生徒が居酒屋へバイトに行き、好きな女性店員に不器用なアプローチをするというネタでありました。
ひとつの小さなお話としてはそれなりに楽しめるものになってますし、役になり切りコント的に過剰な演技はないように見えましたけれども、主な笑いどころがツッコミのワードだけというのが単調に見えてしまったのではないかと思われます。話は普通に進んで行くも笑いに達しきれていない部分が多い印象でした。
わらふぢなるお(グレープカンパニー)
コンビニで店長が新人店員にやりかたを教えようとするも新人がどうでもいいような細かいところばかり質問してくるというネタでありました。
コント内でどうでもいい質問を「空質問(からしつもん)」と呼んで、その手の空質問を中心に話が展開していくわけですが、テンポも良く、質問の視点もツッコミの視点も多彩で飽きさせないように出来上がっています。何より、「ちょっと真似したくなる」というのはこのネタ最大の武器だと思います。細かいところを見ればあまりハマってない部分もあるにはあるのですが、個人的には今回、最も笑ったネタでありました。
ロビンフット(SMA)
息子が父親に結婚の報告をするも、彼女が年齢を干支しか教えて貰っていないことから、彼女の特徴を振り返って年齢を推測するも、推測値がブレにブレまくるというネタでありました。
彼女の年齢は36なのか48なのか、まさかの60、72、84、と年齢予想がだんだんぐちゃぐちゃになっていくところが主に笑うところですが、基本的に話がそこだけに終始するのは厳しかったのかなあと考えられます。情報から導かれる結論もきちっと笑いを取れているところもあればそうでもない部分があったのも理由のひとつかと。ただ、最後のオチが最も綺麗に決まった組ではありました。ラストでだいぶ取り返したのではないかと。
ザ・ギース(ASH&Dコーポレーション)
現場に残った物の思念を読み取って事件を解決に導くサイコメトラー高校生探偵が捜査を開始するも、証拠品の作り手の思念が強すぎて捜査の邪魔をするというネタでありました。
とにかく包丁の作り手である鍛冶屋さんありきという感じでした。最初に包丁を読み取る時、それから犯人と格闘する際に包丁と触れて現れる鍛冶屋さん、逆を言えばそこのふたつがピークであり、あとはなかなか危ういネタ運びだったように思われます。作り手の思念だけで話を進める序盤から中盤は単調さとの戦いでしたし、ラストの下ネタは、あんな感じでは完全な蛇足です。その辺りが響いた可能性は充分考えられます。
続いて、最終決戦のネタです。
ハナコ(ワタナベエンターテインメント)
浜辺で学生のカップルが追いかけっこをしているも、女の子の逃走能力が桁外れというネタでありました。
全体的なテーマは非常にベタなカップルの戯れでありまして、やっていることも基本的にはほとんど同じなわけです。で、こういうベタな場面でちょっと変なことをやってやろう、という考え方もまたベタなはずなのです。いろんな逃げ方を考えよう、というのもコントで普通に思いつくものだと思います。それを、見せ方でその他大勢から一線を画したネタに作り上げたというのは相当なものだと思います。わざとらしくない演技、様々な逃げ方を組み合わせる構成力、不必要に喋りを入れないことも手伝って、優勝を引き寄せたのではないでしょうか。
わらふぢなるお(グレープカンパニー)
肩がぶつかったチンピラに超能力で応戦するも、その超能力が全部くだらないというネタでありました。
下らない超能力を次々に見せられるだけという意味では並列的なネタだったのかもしれません。同じような笑いを見させられて終盤まで持ちこたえきれなかった印象があります。内容がガラッと変わったためか、1本目のネタに比べて説明的なツッコミが少々悪目立ちしたようにも見えました。中盤から何らかのカンフル剤的なものが必要だったかもしれません。
チョコレートプラネット(吉本興業)
意識高い系棟梁と称して如何にも江戸っ子な大工の棟梁が横文字の小難しい言葉を使ったりマックで大工をしようとしたりするネタでした。
いわゆる「意識高い系」の性質をそれに合わなそうな人物へ組み込んでギャップを笑う仕組みだったのだと思いますが、それにしてもそのまんま過ぎたかなあという印象でした。あとは変わったグッズが出てくるネタという印象でして、そのグッズ自体は気になるのですが、笑えるかと言えばそこまでではない感じでした。大工やそれに近い工作をよくやる人には面白いネタだったようなので、そういう意味でもネタのチョイスを間違えたのかもしれません。
今回の感想は以上になります。では。
やさしいズ(吉本興業)
自分を首にした会社へ爆弾テロを仕掛けようとするもバイトの清掃員に見つかり、いろいろやりとりするというネタでありました。
導入があり、主な笑いどころを客に分かってもらい、徐々に話を進め、しばらくしてから場面に変化をつけてラストのオチに持って行くという話の構成はコントの基本形となっておりまして、主に笑って貰うポイントは深刻な爆弾テロ犯と全く深刻でない清掃員のギャップから生じる噛み合わない話のやりとりでした。清掃員のキャラクターは当然笑いに足るポイントではありますが、それを中心にどうにかしようとしてどうにかでき切れなかった印象です。間を取ってみたりとか、随所に工夫はしているのですが、「あ、間を取ってるな」と分かってしまうと多くの場合は間の使い方としてはよろしくないように思われます。
マヂカルラブリー(吉本興業)
知らないおじさんに傘泥棒の容疑をかけられるも、その場面だけが延々とループしていき、登場人物がそれに気づき、どうにかしようとするネタでありました。
市民権を得てきた「ループもの」を用いたコントでありまして、その背景を利用し、どうでもいい場面でループするという現象をいじっていくところを笑って貰うという目論見はそれなりにうまくいっていたのではないかと思われます。ループしているという説明をしながらも展開を進め、更に笑えるポイントも入れていくという意味では非常に効率のいい展開はしていたと思いますが、形式上大体同じものを見せられるわけで、ループごとの変化は特に後半はもっと大きくしてもよさそうには見えました。ラストでループを終わらせようとして阻止されるところは効いていると思います。
ハナコ(ワタナベエンターテインメント)
室内で飼っている犬が帰宅した主人を迎えて遊んでもらい、来客に警戒するという犬としてはよくある場面ではあるものの、犬の言動がかなり人間寄りというネタでありました。
犬の行動がかなり人っぽいのに他の登場人物は犬を普通の犬として扱い、知っているのは観客だけというシステムがかなり異様ではありましたが、話の展開は単なる普通の日常生活に留めることによって話の展開から無理矢理さを一切なくすという離れ業によって、出来としては非常に高いところでバランスよくまとまっている印象でした。犬の言動と周囲との差を笑うのがネタの基本にはなっていますが、犬の演技もあってか話の繰り返し感もなく、特に話が長いとも感じられませんでした。
さらば青春の光(ザ・森東)
熱血予備校教師の典型みたいな人が生徒に発破をかけるもその人はそれだけで教室を出て行き、授業は別の人がやるというネタでありました。
同じようなものをひたすら繰り返しつつ徐々に発展させるネタに長けているコンビではございましたが、よりクオリティが上がっていました。同じものを繰り返すという形式はネタがその繰り返しにどうしても集中してしまい、ストーリーを止めてしまったり、場合によっては無くしてしまったりする傾向が強いのですが、このネタに関して言えば「鼓舞する人」のおかしさや悲哀といったストーリーがしっかり入っており、また物語の破綻も一切見られずに最後まで行けていました。ただ、最後のオチは空振った感があり、もう少し別の選択肢もあったのではないかと考えられます。
だーりんず(SMA)
居酒屋で他の人の会計をこっそり済ませるということをやろうとするも様々な小さいトラブルが積み重なって結局うまくいかないネタでありました。
会計を済ませようとする話がずっと続くわけですが、笑いどころの中心が「そういうベタな格好つけをやりたい人が陥る現象を妙な名前で呼ぶ」になっているのはこの大会ではやっぱり弱すぎるのではないかと思われます。何かやっては独特な名前、何かやっては独特な名前、という風に繰り返し感も強く、話の変化も乏しく感じられる危険性があり、それが点数に響いた可能性はあります。
チョコレートプラネット(吉本興業)
知らない人に閉じ込められて脱出ゲーム的なものをやらされるのかと思いきや、閉じ込められた人が「ここはどこだ」「お前は誰だ」と喚いて話を一切聞かないというネタでありました。
ありがちな悪い人の言うことを全く聞かないという形で最後まで行くわけですが、喚く男の合間合間に悪い人が発する諦めの言葉や緩い言葉をうまく滑り込ましたり、喚く男がよく分からない装置を持ってきたりと、繰り返しによる退屈を防ぐ仕掛けが施されています。そして、後半には悪い人も別のゲームに参加させられ、喚く側に移行するという展開も、伏線を用いてうまく仕上げている印象です。懸念は喚きがうるさく感じるかどうかという一点でありまして、これに関してはどうしても好みが関係しまして、会場ではちょうどよかったようですが個人的には喚き方が少々過剰だったかなと感じました。
GAG(吉本興業)
進学校の真面目な生徒が居酒屋へバイトに行き、好きな女性店員に不器用なアプローチをするというネタでありました。
ひとつの小さなお話としてはそれなりに楽しめるものになってますし、役になり切りコント的に過剰な演技はないように見えましたけれども、主な笑いどころがツッコミのワードだけというのが単調に見えてしまったのではないかと思われます。話は普通に進んで行くも笑いに達しきれていない部分が多い印象でした。
わらふぢなるお(グレープカンパニー)
コンビニで店長が新人店員にやりかたを教えようとするも新人がどうでもいいような細かいところばかり質問してくるというネタでありました。
コント内でどうでもいい質問を「空質問(からしつもん)」と呼んで、その手の空質問を中心に話が展開していくわけですが、テンポも良く、質問の視点もツッコミの視点も多彩で飽きさせないように出来上がっています。何より、「ちょっと真似したくなる」というのはこのネタ最大の武器だと思います。細かいところを見ればあまりハマってない部分もあるにはあるのですが、個人的には今回、最も笑ったネタでありました。
ロビンフット(SMA)
息子が父親に結婚の報告をするも、彼女が年齢を干支しか教えて貰っていないことから、彼女の特徴を振り返って年齢を推測するも、推測値がブレにブレまくるというネタでありました。
彼女の年齢は36なのか48なのか、まさかの60、72、84、と年齢予想がだんだんぐちゃぐちゃになっていくところが主に笑うところですが、基本的に話がそこだけに終始するのは厳しかったのかなあと考えられます。情報から導かれる結論もきちっと笑いを取れているところもあればそうでもない部分があったのも理由のひとつかと。ただ、最後のオチが最も綺麗に決まった組ではありました。ラストでだいぶ取り返したのではないかと。
ザ・ギース(ASH&Dコーポレーション)
現場に残った物の思念を読み取って事件を解決に導くサイコメトラー高校生探偵が捜査を開始するも、証拠品の作り手の思念が強すぎて捜査の邪魔をするというネタでありました。
とにかく包丁の作り手である鍛冶屋さんありきという感じでした。最初に包丁を読み取る時、それから犯人と格闘する際に包丁と触れて現れる鍛冶屋さん、逆を言えばそこのふたつがピークであり、あとはなかなか危ういネタ運びだったように思われます。作り手の思念だけで話を進める序盤から中盤は単調さとの戦いでしたし、ラストの下ネタは、あんな感じでは完全な蛇足です。その辺りが響いた可能性は充分考えられます。
続いて、最終決戦のネタです。
ハナコ(ワタナベエンターテインメント)
浜辺で学生のカップルが追いかけっこをしているも、女の子の逃走能力が桁外れというネタでありました。
全体的なテーマは非常にベタなカップルの戯れでありまして、やっていることも基本的にはほとんど同じなわけです。で、こういうベタな場面でちょっと変なことをやってやろう、という考え方もまたベタなはずなのです。いろんな逃げ方を考えよう、というのもコントで普通に思いつくものだと思います。それを、見せ方でその他大勢から一線を画したネタに作り上げたというのは相当なものだと思います。わざとらしくない演技、様々な逃げ方を組み合わせる構成力、不必要に喋りを入れないことも手伝って、優勝を引き寄せたのではないでしょうか。
わらふぢなるお(グレープカンパニー)
肩がぶつかったチンピラに超能力で応戦するも、その超能力が全部くだらないというネタでありました。
下らない超能力を次々に見せられるだけという意味では並列的なネタだったのかもしれません。同じような笑いを見させられて終盤まで持ちこたえきれなかった印象があります。内容がガラッと変わったためか、1本目のネタに比べて説明的なツッコミが少々悪目立ちしたようにも見えました。中盤から何らかのカンフル剤的なものが必要だったかもしれません。
チョコレートプラネット(吉本興業)
意識高い系棟梁と称して如何にも江戸っ子な大工の棟梁が横文字の小難しい言葉を使ったりマックで大工をしようとしたりするネタでした。
いわゆる「意識高い系」の性質をそれに合わなそうな人物へ組み込んでギャップを笑う仕組みだったのだと思いますが、それにしてもそのまんま過ぎたかなあという印象でした。あとは変わったグッズが出てくるネタという印象でして、そのグッズ自体は気になるのですが、笑えるかと言えばそこまでではない感じでした。大工やそれに近い工作をよくやる人には面白いネタだったようなので、そういう意味でもネタのチョイスを間違えたのかもしれません。
今回の感想は以上になります。では。