2019年3月10日にR-1ぐらんぷり2019を見たので感想を書いて参ります。いつものように敬称略で、ネタ順に書いて参ります。
まずは最初の8組から参ります。
チョコレートプラネット 松尾(吉本興業)
得意のIKKOさんのモノマネを用いたコント。一休さんのポジションにIKKOさんを持ってきて、屏風のトラに美容のためのあれこれを試みるというネタでした。
IKKOさんモノマネを中心としたネタの構成はともかく、通常の会話はIKKOさんではなく、要所要所だけに用いるという方式は会話として違和感を抱かせるものではなかったかと思われます。会話の内容自体もIKKOさんらしさが薄く、どうせなら全部寄せてしまえばいいのでは、という疑問が拭えない状態であった可能性がございます。
クロスバー直撃 前野悠介(吉本興業)
動体視力のテストと称して客席にちょっとした小道具を見せ、後からその小道具がどういうものなのか説明するというネタを続け、終盤にはそれをメルカリで売った時のユーザーの反応を紹介するというネタに繋げておりました。
単純に自作の小道具を紹介するだけでなく、動体視力のテストという形式をひとつ咬ませ、更に途中でメルカリの話にシフトするなど、客席を退屈させないよう変化をつける努力がありありと見て取れるわけですが、その努力が前に出過ぎて話の流れに不自然さが出てしまったのはマイナスに働いていたかと思われます。小道具が徐々に大きなものになるにつれて動体視力テストとの親和性がなくなっていき、メルカリの話へ移る際には動体視力テストが足枷にすらなっているように思われます。だったら、もっと早い段階で動体視力テストを捨てて小道具の紹介だけで笑わしにかかったほうが話がスムーズに移れそうでした。
こがけん(吉本興業)
カラオケがうまくなる機械を買ったものの、それで歌うと全部英語になってしまうという現象に振り回されるコントでした。
歌をネタに混ぜつつもひとつのネタとしていいテンポでやってのけたという印象はございます。「歌が英語」という大前提のボケを冒頭でひとつ作ってしまったため、そこからどう観客の予想を裏切り期待を上回っていくかが勝負になるのだと思いますが、主な武器は歌い方と動き、それからオチを出すタイミングだったように見えました。ネタ時間から見て一つひとつの歌の尺がやや長いため、笑いどころが必然的に大きく制限されるのはかなり不利だったと思います。一発一発が大きな笑いだったらまた結果は違ったと思いますが。
セルライトスパ 大須賀(吉本興業)
赤ちゃんを抱きながら漫談をするというスタイルをとりまして、赤ちゃんに気を遣うがゆえにずっとヒソヒソ声で話すネタでした。
システムの独自性が勝因だったように思います。小さい声のほうがむしろ聞こうとする心理をついたネタでして、喋りながらも話すタイミングをそれなりに見計らっていたように思います。ただ、漫談の内容が日用品のあるあるばかりだったり、赤ちゃんを抱えているという状態をあまり活かしていなかった点が、個人的には「もっといろいろできるでしょ」という不満を招いた次第です。ただ、2本目の決勝ではこのネタ自体をフリにするわけで、そうするとあんまり赤ちゃんに気を向けてはいけなかったのかなとか、いろいろ考えさせられるネタでした。
おいでやす小田(吉本興業)
お金持ちがお金持ちである現状をソファーの上で愚痴るというネタでした。
年々言葉遣いが自然になってゆきまして、かつ笑いを取れるものになっている印象です。その言葉遣いと、あとはソファーの上でバタつく様子を武器にしたネタであったと思います。話の変化が多少は乏しかったように思いますが、その分、自然な変化をしていたようにも見えます。一つひとつの笑いどころは外していなかったように思いますが、今回はBブロックが最も激戦だったのが災いしていたかと存じます。
霜降り明星 粗品(吉本興業)
いわゆるフリップ芸でして、フリップをボケにしてそれに突っ込むというネタでした。
「フリップにツッコミを入れる」という行為だけに全神経を集中したような形だったと思われます。ボケとツッコミ、どちらも切り口・長さ・タイミングなどを一つひとつ違ったものを織り交ぜて、それをテンポよく処理していくことで見る人を退屈させないネタに仕上げた印象です。フリップにいろいろ手を加える芸人も多い中で彼は変に手間や時間をかけるようなものを採用せず、めくり方や使う枚数などに留めて失敗しづらいシステムにしたため、ミスがなかったというのも何気に大きかったと思われます。その分、目新しさには乏しく、ストーリーもないネタとなっておりますが、意図的に切り捨て、割り切ったネタなのでしょう。
ルシファー吉岡(マセキ芸能社)
全寮制の男子校の教師が学生たちに来年度から共学であることを伝え、女子高生とは何かについて説明するネタでした。
日常的な場面から笑いになりそうな部分をうまく切り取ってきた印象です。また、何気ない一言で生徒の状況を観客にうまく想像させることに成功させており、話の流れも自然で退屈させない。特に男子にはウケそうなネタだと思います。ずっと教師役をしているのが気になると言えば気になりますが。勝てはしませんでしたが、決して大負けはしていないでしょう。
マツモトクラブ(SMA)
ツタヤにエロDVDを借りる途中で犬を連れた友人に出会い、つい嘘を重ねてしまうも、犬が嘘に反応して鳴くというネタでありました。
今回の決勝進出者の中で最もストーリーで魅せた人でしょう。自分の嘘に犬が反応して困る、というだけなら多くの人が考えそうなものですが、それを更に飼い主の嘘にまで反応させ、嘘と真実を織り交ぜたり、嘘を白状したりしてラストに向けて畳みかけてくる手腕は流石でした。単純に笑いだけで勝負すると不利になる場合もあるでしょうが、審査員の価値観がちょっとでも違っていたら彼が勝っていた可能性は充分あると考えております。
感想は次に続きます。
まずは最初の8組から参ります。
チョコレートプラネット 松尾(吉本興業)
得意のIKKOさんのモノマネを用いたコント。一休さんのポジションにIKKOさんを持ってきて、屏風のトラに美容のためのあれこれを試みるというネタでした。
IKKOさんモノマネを中心としたネタの構成はともかく、通常の会話はIKKOさんではなく、要所要所だけに用いるという方式は会話として違和感を抱かせるものではなかったかと思われます。会話の内容自体もIKKOさんらしさが薄く、どうせなら全部寄せてしまえばいいのでは、という疑問が拭えない状態であった可能性がございます。
クロスバー直撃 前野悠介(吉本興業)
動体視力のテストと称して客席にちょっとした小道具を見せ、後からその小道具がどういうものなのか説明するというネタを続け、終盤にはそれをメルカリで売った時のユーザーの反応を紹介するというネタに繋げておりました。
単純に自作の小道具を紹介するだけでなく、動体視力のテストという形式をひとつ咬ませ、更に途中でメルカリの話にシフトするなど、客席を退屈させないよう変化をつける努力がありありと見て取れるわけですが、その努力が前に出過ぎて話の流れに不自然さが出てしまったのはマイナスに働いていたかと思われます。小道具が徐々に大きなものになるにつれて動体視力テストとの親和性がなくなっていき、メルカリの話へ移る際には動体視力テストが足枷にすらなっているように思われます。だったら、もっと早い段階で動体視力テストを捨てて小道具の紹介だけで笑わしにかかったほうが話がスムーズに移れそうでした。
こがけん(吉本興業)
カラオケがうまくなる機械を買ったものの、それで歌うと全部英語になってしまうという現象に振り回されるコントでした。
歌をネタに混ぜつつもひとつのネタとしていいテンポでやってのけたという印象はございます。「歌が英語」という大前提のボケを冒頭でひとつ作ってしまったため、そこからどう観客の予想を裏切り期待を上回っていくかが勝負になるのだと思いますが、主な武器は歌い方と動き、それからオチを出すタイミングだったように見えました。ネタ時間から見て一つひとつの歌の尺がやや長いため、笑いどころが必然的に大きく制限されるのはかなり不利だったと思います。一発一発が大きな笑いだったらまた結果は違ったと思いますが。
セルライトスパ 大須賀(吉本興業)
赤ちゃんを抱きながら漫談をするというスタイルをとりまして、赤ちゃんに気を遣うがゆえにずっとヒソヒソ声で話すネタでした。
システムの独自性が勝因だったように思います。小さい声のほうがむしろ聞こうとする心理をついたネタでして、喋りながらも話すタイミングをそれなりに見計らっていたように思います。ただ、漫談の内容が日用品のあるあるばかりだったり、赤ちゃんを抱えているという状態をあまり活かしていなかった点が、個人的には「もっといろいろできるでしょ」という不満を招いた次第です。ただ、2本目の決勝ではこのネタ自体をフリにするわけで、そうするとあんまり赤ちゃんに気を向けてはいけなかったのかなとか、いろいろ考えさせられるネタでした。
おいでやす小田(吉本興業)
お金持ちがお金持ちである現状をソファーの上で愚痴るというネタでした。
年々言葉遣いが自然になってゆきまして、かつ笑いを取れるものになっている印象です。その言葉遣いと、あとはソファーの上でバタつく様子を武器にしたネタであったと思います。話の変化が多少は乏しかったように思いますが、その分、自然な変化をしていたようにも見えます。一つひとつの笑いどころは外していなかったように思いますが、今回はBブロックが最も激戦だったのが災いしていたかと存じます。
霜降り明星 粗品(吉本興業)
いわゆるフリップ芸でして、フリップをボケにしてそれに突っ込むというネタでした。
「フリップにツッコミを入れる」という行為だけに全神経を集中したような形だったと思われます。ボケとツッコミ、どちらも切り口・長さ・タイミングなどを一つひとつ違ったものを織り交ぜて、それをテンポよく処理していくことで見る人を退屈させないネタに仕上げた印象です。フリップにいろいろ手を加える芸人も多い中で彼は変に手間や時間をかけるようなものを採用せず、めくり方や使う枚数などに留めて失敗しづらいシステムにしたため、ミスがなかったというのも何気に大きかったと思われます。その分、目新しさには乏しく、ストーリーもないネタとなっておりますが、意図的に切り捨て、割り切ったネタなのでしょう。
ルシファー吉岡(マセキ芸能社)
全寮制の男子校の教師が学生たちに来年度から共学であることを伝え、女子高生とは何かについて説明するネタでした。
日常的な場面から笑いになりそうな部分をうまく切り取ってきた印象です。また、何気ない一言で生徒の状況を観客にうまく想像させることに成功させており、話の流れも自然で退屈させない。特に男子にはウケそうなネタだと思います。ずっと教師役をしているのが気になると言えば気になりますが。勝てはしませんでしたが、決して大負けはしていないでしょう。
マツモトクラブ(SMA)
ツタヤにエロDVDを借りる途中で犬を連れた友人に出会い、つい嘘を重ねてしまうも、犬が嘘に反応して鳴くというネタでありました。
今回の決勝進出者の中で最もストーリーで魅せた人でしょう。自分の嘘に犬が反応して困る、というだけなら多くの人が考えそうなものですが、それを更に飼い主の嘘にまで反応させ、嘘と真実を織り交ぜたり、嘘を白状したりしてラストに向けて畳みかけてくる手腕は流石でした。単純に笑いだけで勝負すると不利になる場合もあるでしょうが、審査員の価値観がちょっとでも違っていたら彼が勝っていた可能性は充分あると考えております。
感想は次に続きます。